たかが色・形。されど色・形
デザインはざっくり言えば、色や形を整える事だと一般的に考えられています。
その色や形について、とても重要だと思う人もいれば、たかが色・形、と軽く見る人もいます。
それに対してデザイナーは「デザインは単に色形を整えるだけにとどまらず…」という枕詞をつけてその社会的な重要性を説明をすることがよくあります。
しかし、私はこの説明の仕方には違和感があります。
なぜなら、色・形を軽視することについては肯定してしまっているからです。
デザインを軽く見る人の考えとは、つまり色・形(見た目)を優先して機能、性能を蔑ろにする姿勢を批判しているのでしょう。
たしかに防災用品、介護用品などでは何より実用性を重んじなければなりません。
見た目を優先したがために非常時に役に立たない、介護者の負担が増えた、被介護者がケガをしたということでは本来の役割を果たせません。
しかし、色・形というものは視覚情報としての重要な機能があり、決して軽視していいものではありません。
人は外界の情報の大部分を視覚から得ていると言われています。
それだけに、視覚情報による心情への影響は非常に大きいはずです。
むしろ災害時などの極限状態だからこそ色・形がかえって重要になるとさえ言えます。
良い例は病院です。
昔は清潔性を重視し白い内装が一般的でしたが、患者を安心させるために現在は暖色系の色にしたり壁画を施したりするところが増えてきています。
しかしながら、こうした変化はビフォーとアフターを体験して初めてわかるもので、個人レベルでは自覚しづらく、社会的にも認知が進んでいないのが現状です。
私が今一番「見た目」という意味でのデザインが必要だと考えているのは介護現場です。
検索していただくとわかると思いますが、自分が介護される立場になったとき、あるいは家族の誰かがそうなったとき、これらを積極的に所有したいと思うでしょうか?
もちろん介護用品にも従事しているデザイナーがいますし、一生懸命良いデザインを提案しているはずです。
しかしながら、現在の介護業界におけるデザインには重要な視点が欠落していると言わざるを得ないと思います。
おそらく被介護者(=ユーザー)からの意匠性に対する要望というのがほとんど発信されず、かつ汲み取られもせず、また、介護者、現場に従事する人々にも影響があるにも関わらず直接的に関係がないとみなされているのではないでしょうか。
色・形は環境の一部であり、所有する本人の趣向の問題に矮小化してとらえてはいけないと考えます。
私は早くこうした視点が介護業界の常識になることを期待しています。
デザインは色・形を整える仕事ですが、色・形を通して人の気持ちを整える仕事であると表現するべきだと私は考えています。
(筆;白川)